糖鎖とは

糖鎖の働き・役割とは

糖鎖は、ヒトの体の至るところに存在しています。糖鎖はタンパク質や脂質に結合し細胞の表面や細胞の中に多く存在します。また、ウイルスやバクテリアの表面にも存在しています。それらの糖鎖は非常に多様な生命現象、特に細胞のコミュニケーションと識別に関連するプロセスで重要な役割を果たしており、ヌクレオチド(RNA/DNA)とペプチド(タンパク質)に続く「第三の生命鎖」と呼ばれています。

糖鎖の重要性と機能が明らかになるにつれて、ヘルスケアと医療における糖鎖利用への関心が急速に高まっています。糖鎖の生物学的役割を活用して、糖鎖を利用した新しい薬剤と治療法を開発する方法はいくつかあります。

感染と戦う

細菌やウイルスは細胞表面の特定の糖鎖と結合し感染します。この糖鎖との結合を防ぐことで特定の組織や臓器を標的とするインフルエンザなどの感染症を予防および治療することができます。
Diagram showing glycans preventing viruses infecting a cell

アレルギー反応の低下

非ヒト由来の細胞で生産されたバイオ医薬品は非ヒト型の糖鎖が結合している場合があり、これにより異物としてのアレルギー反応が起こることがあります。これらのバイオ医薬品にヒト型糖鎖を人工的に付加(「グリコシル化/糖鎖修飾」)またはヒト型に改変することにより、抗原性を抑え、アレルギー反応を低下させる可能性があります。

Diagram showing glycans reducing drug side effects

血中半減期の延長

薬剤に立体的でかさ高い糖鎖を付加することにより、プロテアーゼ等による分解に耐性を持たせたり、腎クリアランス(薬物を尿中に排泄させる機能)を回避させることができるため、薬剤の効果を持続させることができます。

Diagram showing glycans prolonging therapeutic effects

特定の臓器および細胞へのターゲティング

薬剤に特定の糖鎖を付加することで、がん細胞や臓器に薬剤を輸送可能にすることが示唆されており、薬剤の有効性を高め、副作用を減らすことが期待できます。
Diagram showing glycans targeting affected area

溶解度の改善

難溶解性の薬剤に糖鎖を付加することで水溶性を向上させ、注射剤などへの応用が可能になります。
Diagram showing drug delivery improved with glycans

糖タンパク質製剤や糖鎖を改変したバイオ医薬品はすでに上市されています。糖鎖の役割を知り、それを応用することで、新しい治療法や薬剤の開発が期待できます。

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